地獄雪の女王/TAMON 10
 
おお
心してお聞き
いいかい

すべての花が散り行くまでも

おお
決して目を閉じるな
決して電話をするな

いいかい
そばには誰もいないこと

おお
あの忌まわしい
あの旅の続きを
ああ
まさか今
こうして語るとは

最初は良かった
まさに順調で
船の揺れさえ心地良かった
我々は杯を傾け
歌を歌い
そして語りあい
レクレーションに興じた
まさか
この船が
こともあろうに地獄雪だとは
誰も気がつかなかった

真夏であるに
その雪は
妙なる調べとともに
ゆっくり
ゆっくり
降り始め
徐々にそれは
スペードに変わり果て

[次のページ]
戻る   Point(1)