俄か雨/銀猫
雨雲が熟すのを待てずに
落ちてきた水滴は
過ぎた日の埃の匂いがする
名もなき小鳥が
一斉に声を上げて
巣を目指して羽ばたき
一瞬の喧騒を誘う
今日のわたしには傘がない
誰も此処にいるのを
知りはしない
雨粒の数はみるみる内に
日向の白を消してゆき
髪は
肩は
思い切りびしょ濡れてぬるい
気紛れな俄か雨の
色彩ばかりが濃くなった景色の端を
わたしは濡れた靴を持て余して歩く
切なさが擦れ合って
ぐしゅぐしゅと音を立てている
切なさが擦れ合って
擦れ合って
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