春の扉/まんぼう
思いっきり身震いしたら
壊れてしまうかと思っていた
田舎町に
今ではすっかり馴染んで仕舞い
若かったゴジラ達も
皆立派な町の世話役となり
ズルズル引きずっている
逞しい尻尾に気づきもしない
暖かい陽の光と
まだ寒い春の風に
おおきな背中を丸めて
町内会の打合わせや
何か暖めるように
小さな焔を吐きながら
通りがかりに
よっ、と嬉しそうに笑いかける
こんな黄砂の日は
遠くに何かが霞んで見えたり
もったいないような
桜色の情念すら感じさせるが
ドンドンと尻尾を打ち振りながら
いつかの春へとつづく
緑色の扉を開けて
ボンヤリ明るい露地の奥に
歩いていくのだ
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