目的地からの今の自分の距離。/腰抜け若鶏
 
を低くして、視線を下に落として、ただ足を動かすことだけに神経を集中した。
その姿はそれはひどくかっこ悪かった。
そのかわり、風の抵抗は少し弱くなった、そして自分のこいでいる自転車の車輪が視界に飛び込んできた。

給水塔はまだ見える気配さえない。
でも、僕がペダルをこぐと、車輪は確かにいい音を立てて綺麗に回転していた。
それは僕を勇気付けた。自分は確かに前に進んでいるんだって。
自分のペダルのひとこぎが決して無駄ではないんだって。
それから、だんだん考えがまとまらなくなってきた。
一体自分が何でペダルをこいでいるのか、そんな疑問もその答えも出てこなくなった。
ただ、僕はペダルをこぎ、それに合わせて車輪が回るのだけを見ていた。

一体何回僕はペダルをこいだんだろう?
一体何回この車輪は回ったんだろう?
それはひどく長い時間ような気もした。
でもあっという間だった気もする。

気が付くと、目の前に給水塔が見えた。
僕は嬉しくなった。途端、疲れなんか吹き飛んでペダルをこぐスピードがあがった。
目的地はもうすぐそこだった。
戻る   Point(0)