王の退屈/知風
王は玉座の上にあぐらをかくという、実にやんごとなき姿で悩ましげな溜息をひとつついた。
やんごとなき王のやんごとなき御尻のやんごとなき御穴の御周囲に出来たる、やんごとなき御痔疾のせいではない。確かにその御悩は日増しに重くなるばかりであったが、痼疾(こしつ)も数年来の付き合いとなると家族と同じで、座り方からやんごとなき大の御ひり方まで、自然とうまく折り合いをつけられるようになっていた。
王を悩ませていたのは、この痔を悪化させるばかりの玉座の上にいる時間、すなわち退屈であった。王に流れるやんごとなき血の御威光ゆえか、土地柄が暢気なだけなのか、王の統治する半径20万歩の領地では、事
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