真言/山本 聖
皮下に雷鳴にも津波にも似た不穏な違和感を覚えてつい先ほど解剖学研究所付属病院というところを訪ねたのだけれどそこで分厚い私の皮膚の中に針を差し込んだり青く光るメスのようなあるいは微小なるカメラのようなものを挿入したりして調べたところこれまた地軸のずれか海底の溝のような不穏な結果を申し渡された
ひとというのは常に脱皮をつづけて生きてゆく生き物なのだ例えば爬虫類だとか昆虫の変態と同一で毎日毎日自分の着ている皮を自分自身で剥ぎ取りそれを拭い捨て新しい皮膚がひりひりと空気の通過を感じながら痛がりながらそれが生きるということなのだそれなしにはひとは生きてゆけないし脱皮することができなければ皮下の不穏な叫
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