蝶葬/大覚アキラ
 
噛み千切った花びらが

わたしの喉の奥の方で

今夜蝶に生まれ変わるのです

洞窟のように開け放たれた口から

湧き出るように蝶が飛び立ちます

洞窟生まれの蝶は

生まれつき目が見えないのですが

今夜は月も出ていない真っ暗な夜なので

そんなことは問題ではないのです

闇の中を飛び交う

幾千万の盲目の蝶の群れに

わたしは為す術もなく

身体中を喰い毟られているのです

蝶に牙があるなんて

今まで知りませんでした

それはわたしの愚かさでしょうか

でも

こんな死に方も悪くはない

そう思っているうちに

わたしの意識は

どんどん薄れてゆくのでした
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