【短歌祭参加作品】あしたも夏でありますように/本木はじめ
て風化してゆく八月の午後
水のないプールの底に寝転んだ僕の瞳を覗き込む空
田んぼからはみだしている左あし遠いどこかに夕立の降る
彫刻家死して真夏の青年と永久に呼ばるる半裸の彫像
売れ残る無数のすいか店頭でどんな詩よりもより詩を秘めて
大雨の墓地で郵便配達夫むぎわら帽子を乾かしている
サマードレス闇のむこうへ脱ぎ捨てて蚊帳の中へと入る裸で
青よりも少年少女は水色の海を求めて難破する夏
「エンドれすサマーもおわり」だってほら、線香花火のような太陽
軒下へ無数の風鈴ぶら下げてあしたも夏でありますように
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