文字が失うもの。/えりおん
 
どうでもいいけど、あっくんと似てるな)
とっとと紙の中に戻ってしまった。

なんだ、薄情なやつ。

話したくないなら、出てこなければいいのに。
迷っていた自分が馬鹿らしく思えて、
愚痴を言いながら僕が、紙の中の彼の顔を窺うと、

居なかった。
彼は、“文字”になっていた。

ちょっと寂しい気もした、けれど、

『あ』の次は、『い』だった。
繋がっただけで、情景に吸い込まれて、僕は、
彼の代わりのものを、手に入れた気がした。

「じゃね。また半年後。」




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最近。思い出した。
半年後、『あ』くんは来なかった。
何年経っても、来なかった。

今日も至る所で感動を生み出している文字群。
その中に、僕の友達が、眠っている。




***

文字に意味がある時、失うものがある。



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