帰路/健
「帰ろうか」
誰かの声が
夕暮れ道に静かに落ちて
僕たちは 帰路に着く
寂しさが空を染めて
影が体を追い抜いてゆく
歩きながら
置き去りにする風景と
正しく遠ざかる声
途切れるその一歩手前で
振り返ると
誰もが同じように
振り返って
息を吸って
切り取られる一瞬の絵
「また明日」
小さな声が
風景の上 重なりあって
僕たちは 耳をすます
約束が空にあり
影が体にそれを知らせる
もう一度
歩き出した背中
そろぞれに違う曲がり角 夜
明日の朝
掌に何もなかったとしても
僕たちは向かって行ける
どこまでも透き通った
あの声が浮かぶ空へと
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