ある日のレクイエム/ポロリ
自分を体よりも小さく感じ
軀を覆う肉が柔らかくなってゆくのを感じ
薄い皮膜が重さを感じさせずに
しかしたしかに外界とを遮断している
ような
唾を飲み込まず海に潜るとき
音が何か別なものを伝って響くのを感じ
外界と次元を異にして
亡羊と漂う
観念としての孤独の千年
のような
アルメニア人の妻が
夜中に突如として抱きつくことに
今ではもう慣れてしまったU
力強くだがしかし優しくしがみつかれる
その特権的な地位はなにも彼の優越のみを
意味しはしない
形式化された
毎夜の儀式に
神格化された刹那的な存在を
彼もまた焦燥と隷従の中の
幻想と安住として
理解しないでは無いだろう
自殺が
なにも生死の切迫性の
あるなしによらないことは
その統計上の数字からも
あきらかであるように
生きるということは
生かすということは
その存在の有無ではないのだ
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