同じ月を見ている/大覚アキラ
昨日の帰り道に
なにげなく空を見上げたら
コンパスで丁寧に描いたような
丸くきれいな月が浮かんでいたので
ふいにあの人が教えてくれた
あの歌を思い出しました
ここは木屋町でも丸太町でもなく
ましてや新宿の南口でもありませんが
私を照らしている白く丸い光は
あの歌の月と同じやさしさで
私を静かに包んでいます
明日はあの人に逢えるでしょうか
あの人を重く沈ませた悲しみのような感情は
明日には少しは軽くなっているのでしょうか
私にできることなど
たぶん何もないのですが
私はここから
あの人の今夜のやさしい眠りと
明日のささやかなしあわせを願っていて
そしてきっと
私とあの人は今
同じ月を見ている
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