ぜつぼう/麻草郁
よく泣く友達がいた
映画を観ては泣き、本を読んでは泣き、泣いた話をしては泣いた
夕陽を見ては泣き、空を仰いでは泣き、泣いて泣いてまた泣いた
なぜそんなにも泣くのかと訊いたら、こう答えた
「私は世界に絶望している、だから希望を見ると泣く」
僕が「なぜ絶望するのか」と問うと
彼女は黙って
まどのそとをみた
ぜつぼうはしのびよる
ゆうぐれにゆっくりと
われわれはのぞみなく
ただよこたわってなき
しをまつばかりだった
何が彼女を救えただろうか
新しい神様は何も教えてくれない
よく泣く友達がいた
いまはもういない
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