青い実落ちた/銀猫
 
愛しきものに残された
僅かな時間が
手出しを許さず
無表情に過ぎて行く

死の匂いのする
冷ややかな居心地に耐えかねて
虚ろに庭先ばかりを見ている

こんな哀しい歯痒さのなかで
無邪気を装い気にすることは
夕餉のヒレカツの出来だったりする
わたし きみ
明日にまだ目覚める者にだけ日常が許される
そんな
無情の心理に襲われながら
抗いもせず身を任せるしかないのだね


ああ
柿の木の青い実が
ぽとりと落ちた

風は時折つよく枝をしならせ
木の葉がざわめく
こころの森が
嵐を哭く


ああ

ああ落ちた

柿の実青い



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