月にじらされ/チェザーレ
 

 新月から満月へ

 大きな海を渡り

 透き通る手首は

 あと一歩のところで踵を返す


 誰も彼もが帰ってしまった

 絵画の中でただ

 揺れる

 存在感=まなざし



 私は人間の部分だけを切り取って、どこに人がいるのかを一生懸命調査した。頭、手首、胸、足、性器、尻の穴を熱心にくまなく舐めまわすように探し続けた。しかし、大きなビーカーの中なみなみと注がれた血液の、そのぬめりの中にあなたは誰かを見つけることができるのか?
 結局のところ、私はその大きなビーカーの中のぬめりになんぞ、頬ずり、愛撫することなどできなかったのである。なぜならば、私は凹であり凸。つまり凸でしかなく、偽物の凹でしか愛されることを知らない贋者であるからなのである。


 新月から満月へ
 
 新たな球体に変質した私は

 透き通る言葉を

 不足している色素を搾り出す


 誰も彼もが帰ってしまった

 音楽の中でただ

 背負っている

 まなざしを月に捧げ棄てた





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