影/シホ
 
花は咲かず
風は吹かず
空は暗やみ
ぼくはひとり

いやひとりではなく
ぼくの夢を行き来し
ぼくを翻弄するシャドウたちの
愛すべき
憎たらしい口づけ

ぼくの前に道はなく
ぼくのうしろに逃げてきた跡
それもたちまち
灰色の風景の中へ溶けて消えていく
ぼくの前に厳しい現実
もあらわれず
目を閉じるごとにやってくる
支離滅裂なリアリティ

しかしぼくはたしかに目覚めているのだ
光だって見えるのだ
そうしてぼくは立ち上がり
夕暮れの窓をがらりと開ける

そして今夜もやってくる
シャドウたちの舞い
忌まいましくて
惚れぼれする
時間は針がとぶようだ
なまみのぼくやあなたは
いったいどこにいるのやら

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