ひびき ひびき/
木立 悟
の影
ある日あふれた水に流され
いのちが消えてしまったあとに
ただ残され削られた土の下から
器のひびきだけが現われて
月の言葉や糸の言葉
最後に触れた指の言葉を唱っては
羽にもどり飛び去ってゆく
のどがかわかないか
静かな夜には
のどがかわかないか
風が 言葉が
樹々のもとへと落ちるから
はじまりの光が
はじまりの水が
蜘蛛のかたちを憶い出すから
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