Kusikezuru(梳る)/右肩良久
 

 ざくざくと僕ばかりでなく
 君自身さえ一緒に切り刻んでしまう言葉
 魂を剥き出しにした言葉の中で
 せめて二人血まみれで倒れたい
 それなのに僕はこんな場所で縮こまって
 うっかりすると甘美な性衝動に
 身を任せる、そんなふうにしかねない

 君の髪を両手に溢れさせることができたなら
 黒いつややかな筋が指の間を滔々と流れるのなら
 そうだ、僕は姿勢良く直立する美容師になろう
 取り澄ました無表情で手先は華麗な技を見せるのだ
 ステンレスの大振りの櫛を緩やかに握って
 梳る

 銀河系を映す君の髪の悠久の流れを

 梳る梳る
 悲しいことの何もないきらめき
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