Kusikezuru(梳る)/右肩良久
 
 恋をすることは惨めだ
 倉庫の巨大な薄闇の片隅で
 段ボールの埃をはたいて
 組み立て式ペーパーボックスの
 在庫を数えながら
 君の黒髪を両手に受けて
 溢れるほど両手に受けて、顔を
 埋めてみたいとまで痛烈に追い詰められて
 汗まみれの顔面に
 絶望の涙をひとつ垂らしたりする
 ラベンダーの幻臭に脳をやられて
 ぼやけた視界をぐらぐら揺すったりする
 散乱した空箱の間、薄闇の片隅の片隅に倒れ込んで
 そのまま丸く膝を抱えてしまう
 僕はこんなに惨めな男だったのかな
 目を閉じると赤く焼ける真っ暗闇

 かなわぬ恋ならせめて
 君からひどい言葉で罵られたい
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