願いましては未曾有の水銀/人間
【1】
紙やすりで折った千羽鶴が親指を磨り減らします。
潰れた美容院の裏のポリバケツの中に、
いっぱいに詰め込まれた髪の毛の上で、
私の未曾有の裂傷が、
思い出と一緒にランバダを踊ります。
熔かしたハンダを被ってプールに飛び込んだ婚約者の名前を忘れました。
もしかして母親と同じ名前だったかしら?
プールが沸騰するのに、
時間が溢れるのに、
器が足りない。
口惜しい。
口惜しい。
【2】
絆を踏んだら生理が這い出ました。
私の正体の首を絞めました。
午前9時を交配した雑種犬にフリンジのスプリングコートを着せて
暁の東名高速の車
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