足音/
刑部憲暁
今そこで
足音がしていたので
どこかに行こうとしているのだと思って
それは廊下の突き当たりにある部屋の中の
粗末な机の前なのかな
と思ったりもするが
その足音は
始めはせわしなく廊下を踏んでいたのに
いつの間にか 歩幅が緩くなっていて
ほとんど立ち止まるようなリズムになった
ああ 帰り着いたんだ
あの人の あの足音
静かに休むんだなって
思ったら
あたりがとても静かになった
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