銀魚/マッドビースト
 
皮という習性はない
 冬眠もない
 その代わりに反復に伴う学習がある
 捕食も闘争も表立ってはない
 その代わりに老いることで成熟することを編み出した

 夏に飛び回る虫たちは
 抜け殻に
 繭に
 色々な重たいものを打ち捨てて
 それまでの自分と決別して
 飛び立つのではないか
 だから抜け殻には
 繭には
 光沢がある
 打ち捨てられたそれまでの命の光沢がある

 ひとはそれを溜め込み
 熟成させ
 溶かしこむことで
 前進しようとする
 ときに
 溜め込み消化しようとすることが
 何かを損なっている気がするのは
 どうしてなのか
 
 しか
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