銀魚/マッドビースト
夕方街ですれ違う人の顔を
ひとつひとつ眺めながら駅に向かった
疲れて渋い顔をした顔
厚化粧の顔
おしゃれな眼鏡
莫迦みたいな飾りをつけて
熱心に本を読む
独り言いいつつ
ティッシュ配りの笑顔
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公園の土は
雨の後で黒さを増し
湿った匂いがあたりを満たしている
夏が終われば公園の木という木に
透明な虫の抜け殻が見つかる
それを集めては
中身の虫が美しく成長し
どこに行ったのかを想像する
或いは羨望する
そろそろ彼らは這い出しているのではないだろうか
ひとには脱皮と
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