青のために/佐々宝砂
 
簡素な水色のシャツが夏のお気に入りである。
短いスカートから突き出た貧弱な脚。
フラッパーの髪はもつれて乱れている。

秋は青灰色のワンピースが好きだ。
胸にラピスラズリのブローチをとめる。
癖のない長い髪は風になぶられても端正だ。

ふたりは鏡を使わず化粧する。
ルージュを互いのくちびるに塗る、
赤くはないから口紅とは呼ばない。
目元にきらめく星はみな青い。

準備ができたので、
手をつないで、
屋上に立つ。

夏と秋は冬のために死なねばならない。
そうしなければ春の到来は阻止できない。
ふたりで話し合ってそう結論した。

ふたりの髪は青い。
アニメの少女の髪のように、
非現実的なその青。


6月21日. 2001

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