県立ロダン美術館/右肩良久
 
うしようという答えがあるはずがない。あなたから嵐が去るのを待つだけだ。すべて終わった後で、僕は一人になってあなたの問いの答えを探す。いつもそうだ。考えるべきことが何もなくなったら、あなたは、僕は、どうすればいい?
 美術館でロダンの彫刻を見たときも、僕の頭からこの疑問は去っていなかった。「考える人」は何を考えている?考えるべきことはまだ残されているのか?彼から答えはなかったが、彼の考えるフォルムだけは、僕の中で微塵も揺るがなかった。彫像には考えることなど最初からなにもないことに、僕が思い当たった後もだ。そうだ、考えるということはフォルムだ。
 早春の風は大きなガラス窓の外を吹き、竹林の揺れる庭から午後の光が暖かく差し込んでいた。あなたを失って破滅しようとしている僕の人生の丁度崖っぷちに、ふっとパラダイスの幻影が兆したようにも思えた。
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