鬼の棲む場所/ベンジャミン
痛みに変えて忘れようとしました
それが今ではすっかりまるくなって
まばたきを感じる余裕さえあります
病院のロータリーの側にある池には
白や黒い鯉がゆうゆうと泳いでいて
そんな姿にも微笑んでしまいます
病とは
いったいどんなかたちをして
わたしの中にいるのでしょう
流線型のように滑りこんで
すとんと胃の中に落ちたような
そんな気もします
振り返ると
白い大きな建造物がそびえていて
さっきまでわたしを飲み込んでいたのは
まさしくそれであったのです
わたしはゆっくりと息を吐くと
その場所をあとにして
道端の草花に視線をおとしながら
それが美しいことや
それが美しいと思えることに
ようやく感謝することができました
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