湯殿の龍/
蒸発王
と
静かに笑った
この緑の尾の中には
よく見ると青だけではなくて
黄色や赤や黒群青が
入り混じっていて
きっと爺さんの笑いに色をつけるなら
こんな色だったろう
僕は何か
途方も無いものを思い
丁寧に丁寧に
龍の背中を流した
爺さんが脱衣所に消えた後
桶を片手に
背後の龍を見上げると
空気の反響に混じって
− −
と
音にならない
龍の鳴き声が聞こえる気がした
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