幸薄き人の声を/逢坂桜
 

どういう縁かは知らなかったけど、ひと夏、おばあさんが家にいた。

でしゃばらない、口数の少ない人だった。

私は小学6年生。すきな人がいて、友達がいて、楽しかった。

「主人は、三男坊だったから、街に出て、好き勝手に暮らしていました。

 断るつもりの見合いでしたが、その頃、父が急逝して、一緒になってしまったんです。

 家に碌に入れてくれず、婚礼の虎の子も、好きにされました。

 私の手内職のわずかな蓄えまで、友人という放蕩者にやってしまったことも、

 一度や二度じゃ、ありませんでした。

 手も上げられたけれど、離縁はできませんでした。

 子供は・・
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