霧のある風景/みずほ太陽
社へいく途中気づくと
半透明な黒のトレーナーを着た男が手を握っていて
いつまでも放さなかった
僕はその男の顔を見ようとするけど
気づくと顔を上げることができない
それが誰だったか無性に知りたかったけど
僕は遅れないように会社へ歩き出した
いつのまにか僕らは水滴の海の中にいるらしい
あれからずいぶんと辺りに溜まりだして
昨日まで見えていた景色が今日見えなくなっている
それが僕らにとって良かったことなのか解らない
ただ水没していく海岸線を眺めて
僕は今の在る位置を確かめている
そして今日。虹色の彼女との朝へと至る
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