鳩とコンクリィト/朽木 裕
頭から血を流した鳩が
白くつめたいコンクリィトに横たわる。
いつか見た死の形
それは何故かリアリティがなくて
置物みたいに思えた。
どうして飛ばないの、
お前は鳩でしょう?
嗚呼、それに反して飛ぶ筈のない私は
空を一瞬だけ、飛んだ。
待ち受けていたのは、あの日のコンクリィト。
無様に落下したのは、飛ぶには大き過ぎる肉の塊り。
あの鳩も
こんな風にして
つめたいコンクリィトに打ち付けられたのかな
痛かったかな
痛かったよね
ごめん
生きている限り、
死にリアリティなんてないと思っていたけれど
あった。
私、
本当に本当に、
生きててよかった。
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