サバンナの雨/マッドビースト
草や葉や花の蕾が香る午後
六月の雨に空気は濃さを増している
植物の吐息が混じった空気が
血中に入り込み
くすんでしまった細胞を浄化すると
かすかに残った本能が
脳裏に囁くので
大きく息を吸い込む
昔
手を地面につき駆けていた頃に
走り回り戦い火照った体の熱を
草原の真ん中で突っ立ち
降り注ぐ水滴で冷ましていたような気がする
しかしもう
森にはもどれない私の体を
天の雨が打つ
化学繊維でできた傘に隠れる
卑怯者として天からの雨が打つ
群れを抜けようが
番と離れ離れになろうが
死なない不埒な私を打つ
言葉を忘れた私を
許さぬと言って
天からの雨が打つ
戻る 編 削 Point(2)