蝙蝠傘/暗闇れもん
街角で黒い蝙蝠傘の君に出会った
夕闇に隠れてこちらから顔は見えないけれど
黒い傘からちらちらと映える赤い紅の色が卑猥で
どうしようもなく赤面してしまったことを覚えている
こんな記憶に必死にしがみついている俺って笑えるだろと
貴方は笑うのだろうけれど
私は何だか昔の自分に負けてしまった気がして
唇を噛み締めたまま
うつむく事しかできなくて
何故あの時、雨も降っていないのに黒い蝙蝠傘で歩いていたのかなんて
貴方は聞かないから
私はここにこうしているのよ
なんて言えないわね
過去に縛られて
吸う空気さえ面倒になってきているのかしら
私は何度も咳き込み遠くなった意
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)