暗い日曜日/六崎杏介
 
アルコールと或る子をベランダから放った夜に
街路樹に十の鴉の眼から夢を受信し
重心を失いし精神に幼子の歓声が目蓋に流れ込み
閉じた眼球に宿る万象、宇宙卵としての眼球の膿と
シックスセンス、深い海の遣い、未知に黄金のスイマーが疾駆す
扇子の波に映る6ペンスの金貨、繰るるは銀河のレンズを
公団住宅から見える夢の砲弾のモジュール曲線の先導で
黄金のスイマーの横断、スイなマルスの槍の下も遠くなく
鴉の満ちるガラスケースや、蜂蜜の海や秘密の孕みし羊水すらも
横断する黄金のスイマー・バタフライ、濃紺の睡魔に解放されると窓の外から
彼の息継ぎが聞こえる、私の後継ぎの名を応答する彼の呼吸に
あ、嘔吐する、朝の碧い塗装の窓に昏倒した今
キッチンタイマーが私を呼んだけれど、知らない名前だった。
昼間に後継ぎを探したがどこにもいなかった。
名前の知らない後継ぎと、知らない名前の私は会えますか?
どこに電話しても繋がらなかった。
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