コントラバスは宇宙からできている/まほし
コントラバスは 宇宙からできている
共鳴胴は スプルースやメイプルなど森の木々から、
弓は 草原を走る馬の尾の毛から
成り立っていて、
弓に琥珀色の松脂を塗り 弦に滑らせることによって
音の矢が、ゆるやかに放たれる
コントラバスは 宇宙からできている
川のように流れる五線譜の 水面で乱反射する
ソプラノを支えるように、
水底を伝う バスの響きよ
ピチカートは 透明なおたまじゃくしとなって
弾けては 泳いでいく、生まれ故郷の宇宙へ・・・
宇宙が 秩序から無秩序へ 移ろわずにはいられないとしたら
創る、
という行為は
秩序に 環ることなのだろうか
かつては動植物だった 楽器は
今もなお 生命体として
自らを発した森羅万象に、産声を跳ね返し
ほとばしる旋律は
へ音記号以前、終止符以後のカオスを 結ぼうとする
より深く
ヨリ深ク
その環の中へ、根ざすために
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