カラス/壺内モモ子
道にカラスの羽が落ちていた
とても丈夫な羽で
とても美しい黒だった
懐かしい匂いがしたので
部屋に飾ろうと思い
拾ってかえることにした
なあカラスよ
イソップ物語の『おしゃれなカラス』でお前は
川べりに落ちていた他の鳥の羽根を体に飾るが
その黒い体がそんなに嫌いか
他の鳥たちは、その艶やかで美しい黒を
羨ましがっているのだぞ
なあカラスよ
今思い出した
お前のその黒は
いつか私が愛した人の髪の色
いつか私が愛した人と見た
夏の夜の空の色
私が今、見ている景色は
こどもの頃の帰り道
夕焼け空に
ガアガアとカラスが鳴いている
なあカラスよ、カラス
お前は本当に不吉な鳥か
私に幸せを運んできてくれないか
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