影の格子の濃さを嗅ぐ/シホ
 
窓の縦線だけが
くっきりと濃く
あわあわと振れる内部の宙

遠くて近い
雑踏のざわめきは
緊迫する耳の内圧につれ
次第に弛緩し浮遊する

易しい無理を
口びるにのせて
縦線だけが濃く強く
機械化していく目に貼りつく

窓の向こう月は
赤く照って居て
世界中の匂いを集めて嗅ぐ徹底的な夜

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