親/さくらほ
冬はな、あっちのほう行くんだけど
夏はな、うちの上を通るんだ。
飛行機がすごく大きく見えるんだ。」
と何度も飛行機が来るたびに教えてくれる
わたしは何度も聞いた話を
「ふーん、そうなんだ」と聞く
ああ
お父さん
もっと小さい頃から
そうやって話したかった
一緒に空を見たかった
お父さんの話
いっぱい聞きたかったよ
でも
あなたには時間がなかった
あなたが悪いわけでもなく
私が悪かったわけでもなかったんだ
今だって
顔を合わせれば
口喧嘩もするし
面白くない事もいっぱいある
それでもわたしに流れる血は
あなたたちのもの
頑固な父に
不器用な母
わたしにそのまま受け継がれ
二人の子として
わたしがいる
わたしは
あなたたちの
子供です
ああ
わたし
愛されたかったんだ
わたし
愛したかったんだ
願いは
それだけだったんだ
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