emolition mold-boy(後日談)/人間
 

テレビを見ながら退屈と会話をし、
ハムと刻みネギと退屈を炒め、
西日を背に退屈の陰核をつまみ、
疲れた退屈に優しく腕枕をしました。


宗太は小学校の給食時間に聞いた
「王様の耳はロバの耳」を思い出し、
退屈の穴に向かって
秘密を漏らしました。
「俺の子じゃない、俺の子じゃない、俺の子じゃない」


そして宗太は、部屋の
畳を掻き分けた隙間に退屈の種を埋め、
来る日も来る日も水を与えました。
週に一度は、
100円均一で買った家庭園芸液肥を垂らし、
毎朝毎晩、
「おはよう」と「おやすみ」を忘れませんでした。


ガスも電気も水道も止まり、
世間にも時代にも忘れられ、
宗太は退屈の苔に満ちた部屋の中で、
何本もの小さな手に握手をして歩きました。
退屈の種を植えた場所からは、
幸枝の匂いがする小さな頭のような花が咲いて、
窓から射す光を集めていました。


宗太は青緑の愛に包まれながら、
苔の床に幸枝の似顔絵を描き、
漏らした秘密が直立不動で見つめる中、
王様のような格好で退屈と心中しました。
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