emolition mold-boy(後日談)/人間
 
宗太は朝方、警察についていきました。

そこは樹海の、
小道からよく見える位置でした。

丁度、立っているような姿勢で、
声をかけたら届く距離で、
幸枝は青緑になっていました。

長いスカートの裾からは、
小さな頭と
握った拳が、
樹の根に抱き取られるような形で固まっていました。

沈殿している朝霧の中、
幸枝と小さい頭は、
鋭い木漏れ日によって、
宗教画のような静かさで抉り出されていました。
宗太はまばたき一つで、
落書き程度のうろ覚えな天使を、
雨のように降らせました。


宗太は悲しみではなく、
それの退屈さによって日々を沈めていきました。

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