バス/プテラノドン
私は一人でバスに乗った。乗客は私だけだった。
バスはバス停のない民家の前で止まった。庭先から、
喪服を着た大勢の人達が車内に乗り込んできた。
そして皆一様に、最後部に座っていた私の前に来ると
耳元でぼそぼそと何かを呟き、そのまま
バスをすり抜けて行った。そうして最後に
私の前に立っていたのは、幼少期の「私」だった。
「私」は何も言わずに隣に座り、それと同時に
バスは再び出発した。
それから私たちは、さまざまな場所を見てまわった。
初めて来た所や、何度も来た所。
忘れていた所や、行きたかった所。
私たちは戸惑うこともあったが、車内から眺める
その景色を見つめながら笑っていた。
そして、バックミラーから懐かしそうに
私たちを見つめていた運転手も。
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