今を生きる、ということについて。/大覚アキラ
当然ながら、人は未来を生きることはできない。
今、この瞬間を生きることしかできない。
にもかかわらず、人は皆、過去に縛られている。
それどころか、過去を生きているかのように見える人さえいる。
今という瞬間に存在していながら、
まるで魂は過去のある時点に置いてきたままのような。
人が、今この瞬間に立脚し、
常にリアルタイムで自分自身を、
そして今という瞬間を更新し続けながらも、
同時にまた自分自身であり続けていられるのは、
人が記憶に拠って今を生きているからだ。
記憶を拠り所にし、それを艫綱として今この瞬間に立っているからだ。
過去があるからこそ記憶は存在し得るし、
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