Cats/みつべえ
 
てきたのだろう。ラッタはますます身を低くして地面に平たくなった。ミツルが自分をさがしているのを知っているからだ。見つかるとむやみに追いまわされ、取っ捕まったあげく、空中高く放り上げられたりする。ラッタが一回転して見事に着地するのを見て面白がるのである。たまったものじゃない。
(オレはオモチャじゃないぜ)
林立するチューリップの茎のすきまからミツルの異常に広いおでこが見える。彼もこちらの方を見ているにちがいない。ラッタはさらに身を固くした。そのとき家の奥からミツルのママの声がした。
「ミツル、帰ってきたら、すぐ手を洗って!」
「へーい」
 ミツルの姿が消えるのを確認するとラッタは大急ぎで
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