Cats/みつべえ
た。
毛づくろいを終えるとラッタは窓から庭に飛びおりた。庭では赤や黄色のチューリップが朝の澄明な光を吸って、もっともっと大きくなるんだと言わんばかりに風に揺れている。そのよく手入れされた花壇にまっすぐ闖入して、向こう側の垣根のそばまで突っ切った。ここはもともとラッタの通り道なのだ。まったくネコほど自分のマニュアルに忠実な動物も珍しい。いっけん野放図にみえる行動やしぐさにも一定の決まりや順序がある。
垣根の内側に一本の古木が立っている。何の木か知らない。一年中、花や実はおろか枝葉さえつけずに、ただぽかーんと突っ立っている。その幹のところがラッタの爪とぎの場所である。毎日爪をとぐので、そ
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