Cats/みつべえ
 
もっとも、集会といっても議論をかわしたり、多数決をとったりするわけではない。近所のネコどもが誰が呼ぶともなく神社の境内にやってきて円陣をつくり所在なげに座っているだけのこと。
 そのネコたちのなかで、ひときわ目立つのがゾシマだ。体中白くて厚い毛におおわれているのに、顔の部分だけ無毛で、もう何百年も生きているかのような皺が無数にはしっている。そのため、どれが目だか口だか、さっぱりわからないのだ。ただ皺のひとつが突然ひらき、ぴかっと光ると、それが目だとわかり、赤い舌が、ぬめっと見えると、それが口だとはじめてわかるというシロモノなのだ。実際、ネコかどうかも疑わしい。みんなは彼を畏怖をこめて長老と呼ぶ。
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