Cats/みつべえ
 
し込んでいる一点が見えた。破風のやぶれ目だった。あとは屋根伝いに土塀の上におり、地面を窺えばよかった。
 ついにエカテリナは、生まれてはじめて外の日だまりに立った。そよ風がやさしく体毛をそよがせ、解放感がさわやかに全身に満ちた。
 彼女はそのまま逃走しようとは思わなかった。たしかに自由への欲求は止みがたいものがあるが、食うものと寝る場所に困らない現在の贅沢な暮らしを捨てる気はなかった。なにしろ血統書つきなので、すぐに追っ手がかかるのは火をみるより明らか。とすれば、いままでの生活を続けながら、密かに外で遊ぶのを楽しんだ方がいい。うん、そうしよう。と、エカテリナは安易に、しかし計算高く決め込んでし
[次のページ]
戻る   Point(1)