ビタミンヘラクレスナナメヨコ/カンチェルスキス
 
はや最終宣告だった。
「じゃあ、餃子二人前、ニラ抜き、頼んでおきますね?」
 刑事長の返事は威勢がいい。
「よぉっしゃ!」
 駅は遠かった。本当にたったの500キロかどうかもわからなくなってた。自転車置き場に自転車を置いて、もう一週間が過ぎていた。その間に略奪愛が四つか六つ。おそらく自転車のサドルにも名前のわからないたぶん食用でないキノコが生えてるに違いなかった。あそこは湿地帯だ。すげえ湿潤地帯。おれの眉毛は伸び放題、洗面台の下で育ててるアルファルファもきっと荒くれ放題だろう。でもおれは気にしなかった。自分のひどい体臭も気にしない。足の親指と人差し指の間からはじまるゴム草履の日焼け跡だけは
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