葛西佑也過去作品集?/葛西佑也
 
が付いてしまった手のひらを
ゴシゴシと洗う音だけが
世界の通学路に響いて

指先に鈍い痛みがはしり
涙がポロポロと頬を流れて
潰れたメロンパンを湿らせた

指先の痛みは
世界の通学路の無意味を
しつこいくらいに象徴して
生きている実感を
絶望に喩えた

もう三日間何も食べずに
ただメロンパンを潰して
湿らせてきた

世界の通学路に
自分の存在を
確かめられずにいた

不安が背中に生えている
メロンパンを食べながら
本当はメロンを食べてるんじゃないか
そんな不安

本当は何も食べていなかった
安っぽい不安だった


少しお腹がすいたので
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