宙に舞う女/凡
宙に舞う女
くすんだ夜空に溶け合う駅前の噴水をぼんやりと眺める
俺の目がくすんでいるのか、それとも
その答えを出す余裕すらなく
俺は俺の目を噴水の前にたつ女へと視線を移らせていた
とりわけ美しい顔立ちでも体でもなかったが
きっと二重瞼なのであろうその目元から無数の睫毛が
ぴんと三日月めがけてのびているのがやけに俺のこめかみをしめつけた
サラリーマンの急ぎ足から巻き起こる土埃のように
女の目の焦点は乱れ、二度と同じ場所にはとどまっていなかった
そのうち女の体ごと宙に舞ってもみくちゃにされるのではないか、と
俺は心配するというよりむ
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