夜の光景/クリ
一歩手前の、眠りに墜ちる一歩手前の、瞬間の持続です。
いつまでもピンボケの、近景と遠景と心象の混合物。
使い古しのモノクロームしか認識できない
桿状の細胞のせいなのでしょうか。
それとも「たそ-かれ」はいつもこのような
黄泉の国の粗いデジタルコピーなのでしょうか。
青みがかった黒はいかにしてあなたの過ごされなかった時刻を描くのでしょう。
今、目覚めているのはあなただけ。
宇宙は眠りに陥ちています。
弥勒さえも夢を見ています。
アララト山が闇に融けています。
あなたは子供だ。
あなたは理由もなく寂しい。
香を焚いたのはだれだったのだろう。
紫蘇の葉の裏の蟋蟀と
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