朝がくる/光冨郁也
あさがくる。
わたしはかがんだ姿勢で、静かに息をのむ。
空からおとされた、その夢から覚めきらず、
湖の底から、
裂けた形をした空を見上げる。
藻にからまり、
わたしは力なく、湖面をあおぐ。
きょうまでは、まぶしい朝日がなかった。
水の底では、音もなく、声もなく、笑みもなく。
あるのは、わたしの呼吸のたびに、
生まれる小さな気泡。
わたしが生きている証に、
湖面に向けて、泡が浮上する。
きょうまでは、なつかしい声もなかった。
あさがきた。
わたしは目を開け、手で水をかき浮上する。
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